令和5年度の年度更新の時期が近付いてまいりました。

年度更新は、令和4年度の賃金総額から労働保険料を算出し確定保険料を申告、納付するとともに、新年度(令和5年度)の概算保険料を申告、納付する手続で、

今年度の申告納付期間は、61()710()になるようです(詳細はこちら)。

 

 

事業主が支払わなければならない労働保険料は、労災保険料と雇用保険料の2つをいいますが、

このうち労災保険料は、企業努力により節約することができる制度になっています(一定規模以上の事業の場合のみ)。

これは「メリット制」と呼ばれ、事業の種類ごとに一律に定められている労災保険率について事業者負担の具体的公平を図り、企業の災害防止努力を促進するために設けられているものです。

業務災害発生の比率(収支率)が低ければ労災保険料のうちの業務災害部分が最大4割の範囲で引き下げられ、収支率が高ければ引き上げられる仕組みです。

 

具体的には、①労災保険に係る保険関係成立後3年を経過している継続事業または一括有期事業で、一定規模以上の場合、または、②特例メリット制による場合は厚生労働省令で定める特別の安全衛生措置を講じたうえで特例適用の申告がある場合に、適用されます。

 

 

一定規模以上とは、次のいずれかに該当する場合です。

  • 常時使用労働者数が100人以上
  • 常時使用労働者数が20人以上100人未満の事業場で、災害度係数が4以上
  • 建設の事業または立木の伐採の事業で、確定保険料の額が40万円以下

 

 

たとえば、労働者数100人、賃金総額5億円の「金融業、保険業又は不動産業」の事業場(労災保険率1000分の2.5)ですと、保険料が次のとおり変わります。

 

 

 1 メリット制が適用されない場合の労災保険料は、

労災保険料 = 賃金総額(100 ×500 万円)× 2.5/1000 125 万円

 

2 メリット制が適用される場合は

  • 無災害事業場の場合(メリット収支率:0%メリット増減率:-40%)

   メリット料率 = (2.5−0.6)1000 × (100−40) 100 + 0.61000 1.741000

   労災保険料 = 5億円 × 1.74 1000 87 万円

 

  • 労災多発事業場の場合(メリット収支率:200メリット増減率:+40%)

   メリット料率 = (2.5−0.6)/ 1000 × (100+40)/ 100 + 0.6/1000 3.26/1000

   労災保険料 = 5億円 × 3.26/1000 163 万円

 

 

したがって、メリット制の適用により、労災保険料は 87 万円~163 万円の間で変動することになります。

 

なお、特例メリット制の場合は、一定規模以上の事業でなくても、特別の安全衛生措置を講じたうえで都道府県労働局長の確認を受けることで、最大45パーセントの増減を行う制度ですので、通常のメリット制の40パーセント増減より増減幅が大きくなります。

 

 

私個人としては、メリット制の計算が複雑で難しいという印象を以前より持っていましたが、

災害が発生していない事業場で保険料負担が軽くなる仕組みは理にかなっていますし、事業者側が災害防止に努力することを期待でき、将来の災害発生予防につながる点で有意義な制度だと感じました。

 

 

メリット制に関する詳細は、厚生労働省のページをご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhokenpoint/